「透析看護って何するの?」「透析って難しそう」
透析看護と聞くと、病棟勤務の看護師からすればどんな感じなんだろう?と疑問ですよね。そもそも、透析患者さんが通院するところって、どんな現場なんだろう。看護師はどんな役割をもっているのだろう、と。
実は、透析クリニックでの看護師のお仕事は、透析患者さんにとって、重要な役割を果たすのです。機械的なイメージもある「透析」ですが、看護師と患者さんの関係性も重要視される、とてもやりがいのある現場です。
私は透析クリニックで5年間務めた経験のある、看護師のうにぺこといいます。急性期病院や、訪問看護も経験し、今は専業主婦をしています。さまざまな経験の中でも、透析看護師とは、患者さんに教えていただくことも多い、学びの大きいお仕事でした。(^^♪
今回は、透析看護師のリアルがわかる、
- 透析看護の仕事内容
- 透析看護師の難しいところ
- 透析看護師に向いている人
の3つについて、実体験の中で得た奥深さや、やりがいも交え、詳しく解説していきますね!
この記事を読めば、「透析看護って楽しそう!」「透析にいってみようかな!」「私も透析看護ができるかも」と、透析看護を良いなときっと思えるはずです!!
透析看護の仕事内容
透析看護とは、腎機能が低下した患者さんに対して、人工的に体内の老廃物や余分な水分を取り除く治療(透析)をサポートする看護です。患者さんが通院透析を受ける、いわゆる透析クリニックでは、「血液透析」の患者さんへの看護が主となりますね。
血液透析とは、腎臓の機能が正常に働かなくなった時に、体の血液を体外に取り出し、人工的な膜(ダイアライザー)で老廃物や余分な水分などを取り除き、きれいな血液を再び体内に戻す治療法のこと。
それでは、透析看護師の仕事内容について、
- 透析前・中・後の全身状態の観察
- 穿刺(せんし)から透析機器操作、抜針(ばっしん)・止血まで
- 患者さんとのコミュニケーション、指導
大きくこの3点に分け、詳しく解説していきます。
透析前・中・後の全身状態の観察
透析の開始前に、体重の測定、バイタルサインチェック、シャントの確認(カテーテルの場合もある)も行っていきます。患者さんの日常性との変化に注意しつつ、安全に透析ができる体調であるかを確認します。
その後、目標の体重まで除水が行えるか、患者さんと相談をしながら、本日の透析での除水量を決定。透析を開始していきます。
血液透析の最中は、血圧下降のリスクがあります。要因はさまざまではありますが、筆者自身、透析中に意識消失をしてしまった症例、最大の急変である心肺停止が起こり、蘇生・救急搬送となった症例も経験しました。常に体外循環を行っている、という自覚を持ち、観察・対応しなければなりません。
透析終了後は、バイタルサインが問題ないことを確認。患者さんが安全に帰宅できるよう状態かアセスメントします。入院中の患者さんとは異なり、透析病院での勤務は、患者さんが通院しているという前提があります。患者さんが帰宅するために、患者さんはどうやって帰るのか(徒歩なのか、介護タクシーなのか、家族のサポートがあるのか等)まで、きちんと把握し、対応しなければなりません。
穿刺(せんし)から透析機器操作、抜針(ばっしん)・止血まで
血液透析では、透析機器の操作も看護師にて行う必要があります。
まずは、患者さんのシャントへの穿刺、透析回路を接続して透析を開始する。終了時は回路内の返血をして、抜針、止血の対応まで行います。
血液透析には、回路内の血液凝固を予防するため、抗凝固薬が使用されますよね。また、患者さんによっては内服薬等の影響で、出血傾向の強い方もいらっしゃいます。止血まできちんと看護師介助、または患者さん自身に行ってもらい、安全に帰宅できるようにします。
患者さんとのコミュニケーション、指導
透析看護では、患者さんとのコミュニケーション、また指導的な役割が重要です。
透析を受ける患者さんは、数多くの制約があります。食事制限、水分制限。シャント腕で荷物を持たない等の行動制限。内服の飲み方、など。
自身の身体に向き合うことが難しく、課題を抱える患者さんも数多くいます。日常からコミュニケーションの中で、何に困っているのかをくみ取りつつ、対応していく必要があります。
透析看護師の難しいところ
透析看護師の具体的なお仕事内容について、お伝えさせていただきました。
それでは、その中でどんなことに難しさを感じることが多いのでしょうか?透析看護の難しさについて、
- 穿刺技術の難しさ
- 指導的関わりの難しさ
この2点に絞り、お伝えさせていただきます。
穿刺技術の難しさ
先述したように、透析看護は、血液透析を始めるために、シャントに針を刺す=「穿刺」をしなければ始まりません。
穿刺には看護師のスキルが問われています。患者さんのシャントは太さ、深さ、皮膚の張り、まさに十人十色!しかも、病棟で採血や点滴をとるときに使うような細い針ではなく、15~17Gの太い針です(´;ω;`)筆者も、初めてその針を見て、指導を受けつつも穿刺をしたときは、緊張で汗が止まらず…。
何度も経験していくことで、スキルは磨かれていきます。最初は先輩看護師の指導を受けながら、実施できるので、急がず安全にとの心がけが最重要です。万が一、血管内で出血が広がると、シャントが使用できなくなってしまう可能性があります。
また、穿刺というのは、患者さんに痛みが伴うものです。この「痛み」は、患者さんはずっと心に残る場合があります。「何度も失敗された」「あの看護師は刺せたのに」そんな風に言われてしまうこともありました。
誰でも、痛いことって、嫌ですよね。私たち看護師は、穿刺という行為を、どうしても業務の中の一貫としてしまいがちです。しかし、患者さんの痛みはずっと消えません。もちろん、わざと痛みを与えているわけではないですが、痛みを伴ってしまったときには、きちんと謝罪をする。先輩看護師に手を代わる。など、誠意を持った対応をしなければなりません。こうした丁寧な対応の積み重ねが、患者さんとの信頼関係の構築にも、大きく影響するのです。
指導的関わりの難しさ
透析患者さんと関わる上で、まず必要な視点は、「大きな決断のもと、今日も透析を受けている」という視点だと思います。これは、透析看護師になり3~4年目ごろから、気づけた視点でした。
腎臓の機能が低下して、このままでは命に関わる、人工透析をしましょう。と、医師より説明を受け、患者さん本人・ご家族の揺れ動く思いの中で決断された、大きな治療の選択。多くの生活制限を受けつつも、今日も4時間の治療に向き合っている。そんな患者さんの思いへ、尊敬の心をもって関わることが、必須だと思います。
透析患者さんの中には、治療の経験年数が非常に長い方がいらっしゃいます。透析歴20年、30年、また40年以上という患者さんとも出会いました。皆さんそれぞれに、「自分なりの管理方法」だったり、こだわりもあることが、ほとんどでした。
私たち看護師は、患者さんのやり方を尊重しつつも、よりよい療養生活のため、アドバイス、時には修正と指導しなければなりません。正しい指導内容でも、伝え方を誤ってしまうと、患者さんは自分の治療経過を否定されたような気持ちになっていまいます。「私はあなたより透析が長いのよ!!」と叱られてしまったことも、しばしばありました。(笑)
患者さんの大事にしていることはなんだろうか?と深く考え、尊敬の思いを忘れずベッドへ足を運び、お話を聞く。穿刺、止血と対応をする。そんな透析看護の一連の関わりの中で、看護師と患者さんの関係性は、少しずつ深くなっていくのです。
透析看護師に向いている人
それでは、透析看護師にはどんな人が向いているでしょうか?
基本的に、看護師を目指し今日も患者さんと向き合う、看護師のあなた。透析看護師にきっと向いています!患者さんの安全・安楽のためにと、志高く看護をされる看護師さんならば、誰でも現場で役立てるはずです。
強いて言うならば。
透析患者さんは、循環器疾患など多臓器の疾患も抱えている方が多いです。ある程度の一般的な疾患の病態生理がわかる、内服薬がわかる、という知識は絶対的に必要です。看護師になって、病棟勤務での患者さんへの看護、さまざまな症例の経験があると、より良いでしょう。
また、先述したように、穿刺スキルやコミュニケーションスキルも重要です。ただこれは、透析看護にきてみないと経験できない部分も大きいです。不安なことは先輩看護師に聞き、安全に、繰り返し経験していくことで、スキルは磨かれるでしょう。
筆者自身、急性期病院ICUでの3年間の後、透析病院へ転職しました。ICU看護の時にも、体外循環、血液透析の経験があるので、きっと大丈夫!と思い入職しましたが、実際は業務内容も、患者さんも、ぐっと異なりました。しかし、先輩看護師に丁寧に指導いただき、スキルを磨きつつ、重要な視点をもって看護に携わることができたなと感じています。
一番大切なのは、腎不全という慢性疾患を抱える患者さんに寄り添うという、看護の心です。患者さんに叱られたり、穿刺ミスが続き凹むことがあっても、何年も揺らがず努力できる人は向いています!
あなたもきっと見つかる、透析看護のやりがい
いかかでしたでしょうか?
透析看護師のリアルについて、お伝えさせていただきました。
どんな看護の現場でも、初めての場所は戸惑います。特に、透析看護は、かなり異色といっても過言ではありません。
しかしながら、現在は高齢化社会も進み、日本の透析患者さんは34万人を超えるといわれています。透析看護師は、需要の高い仕事だといえるでしょう。

いつくかのハードルはあるものの、そこで見つかる看護のやりがいは、きっと他の現場では見つけられない、貴重なものだと思います。
この記事を読んで、一人でも多くの看護師さんが、「透析看護、私でもできるかも」と思い、現場に足を運んでいただけることを、心より祈っています。
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