皆さん、訪問看護師というお仕事を、ご存知ですか?
訪問看護師とは、さまざまな事情でご自宅で療養されている方々へ、看護ケアを提供するお仕事です。
2020年の新型コロナウイルスによるパンデミック。医学の進歩と共にすすんだ高齢化社会、多死社会の到来。近年、医療現場を取り巻く状況は、多様な出来事により変化してきています。
医療機関の受け皿を増やしていく必要性が高く、在宅医療の需要はさらに拡大し続けているのです。
在宅医療では、訪問診療医や、療養のプラン作成やサービス調整を行うケアマネージャー。生活援助を行う訪問介護。
そして、在宅医療のチームの一員である、訪問看護師。
私は訪問看護師として、3年間勤めました。
時に笑い、時に涙し、利用者(在宅療養者を指す。以下利用者と書く)さんとそのご家族を看護する、素晴らしい経験をいただくことができました。
この記事では、訪問看護師の楽しさをお伝えすべく、
・訪問看護の仕事内容
・病院勤務との決定的な違い
・利用者さんとの信頼関係
上記3つのポイントを、詳しく解説していきます。
訪問看護師になりたいけど、どんな仕事なのか知りたい方、不安がある方、そんな方々に読んでいただきたいと思います。
訪問看護の仕事内容
訪問看護師は、一般的に「訪問看護ステーション」に勤務することになります。
朝、始業時間にステーション事務所に出勤。その後4~6件程度でしょうか、自分の訪問スケジュールにそって、各利用者さんのご自宅へ、訪問をしていきます。
事業所によっては、直行直帰といい、事務所に寄らず訪問先に直行し出勤、訪問先で退勤、直帰と許可をしている事業所もあります。自宅近くでの訪問があるときは、時間も有効に活用できますし、働くスタッフとしてはとてもありがたいですよね。
訪問看護を実施するには、医師の記載した「訪問看護指示書」というものが、必須になります。
訪問時間に訪問先へ訪問。おおむね30分~60分(医療保険・介護保険等にもよる)の看護サービスを提供。退室後は、電子カルテへ看護記録の記載。必要時、医師へ状態報告、指示確認。多職種への情報共有が必要な場合はケアマネージャーに報告、情報共有を依頼する。そのように1日の業務を行っていきます。
現状、冒頭に前述しました、在宅医療の需要増大に伴い、「緊急時訪問看護加算」という、24時間緊急看護対応を可能とする訪問看護ステーションが増えています。利用者さんが、万が一緊急の状況となった場合に、訪問看護師にて緊急訪問や医師への指示確認などの対応をとります。
就職をする際には、緊急対応(求人にはオンコール対応と表現が多いです)ができるかどうかも、重要視されることが多いです。こちらはオンコール手当として還元される場合がほとんどであり、稼ぎたい看護師さんにはピッタリ!です。
病院勤務との決定的な違い
看護師さんは、主に病院勤務を経験されていると思います。
病院では、近くに同僚がいて、医療物品が常にあり、緊急時にはスタッフコール等の利用も可能。そんな環境だと思います。
訪問看護では、病院のような環境はありません。自分で必要な物品を忘れてしまえば、ケア・処置を実践できなくなってしまうのです。
また、物品の工夫も必要です。例えば、陰部洗浄のボトル。最近では、介護グッズとして便利なボトルや洗浄剤が販売されていますが、多くのご家庭が、ペットボトルの蓋に錐で複数穴をあけて、ボトルの代わりとしています(^^)/
他にも、点滴が必要な利用者さんには、点滴棒ではなくS字フックやハンガーを利用して点滴治療を受けたり(介護保険を利用し、福祉用具として点滴棒をレンタルすることも可能です)。
在宅療養には、利用者さん側に療養費が継続的にかかってきます。できる限り療養費を削減できるよう配慮することで、利用者さんは安心して在宅療養を継続することができます。
人的環境でいえば、看護師一人でご自宅へ訪問することになるため、看護師一人での判断も必須となります。病院ではすぐに応援を呼べるものの、一人で対応を強いられる場面も出てくるのです。
筆者も、一度体格の大きな利用者さんの対応で、苦労したことがありました(^^;
利用者さんの状態を的確に確認し、医師への報告や救急搬送など、フィジカルアセスメント力や、コミュニケーション力が必要になります。
しかしながら、初めての訪問看護の場合、多くの事業所で先輩看護師によるフォローアップがあります。独り立ち後、判断に迷う時には、先輩看護師、上長に電話での報告・相談を行いながら、安全に実践できることと思います。
利用者さんとの信頼関係
こちらは、前述の病院勤務との違いに関わってくる点でもあります。
看護の対象が、病院にいる・病院に来る「患者さん」ではなく、ご自宅にいる「利用者さん」に変わる、という点です。
ご自宅、という超プライベートな空間に、来客として足を踏みこむのです。
以前、私の同僚も「完全アウェイだよね」と話していましたが、まさにその通りかもしれません(^^;
したがって、訪問時の玄関でのご挨拶から、ケア中の看護師の言動、退室するまでの間、適切な礼節、謙虚さをもって訪問することが重要だと、私は考えています。実際に、筆者自身もクレームをいただいたこともありましたし、他スタッフから大きなトラブルとなった事例も耳にしました。
しかしながら、サービスを提供する側でありながら、看護師という医療職でもあります。利用者さん本人や、ご家族さんが誤った内服や注射管理、ケア等をしていた場合は、きちんと修正していかなければなりません。
そのあたりのコミュニケーションが非常に難しいのも現実です。
毎週の訪問看護の時間で、誠実に対応・向き合って看護サービスを提供していくことで、病院勤務では経験できなかったような、とても強い信頼関係を築くことができるのも、訪問看護の一番のやりがい、素敵なところであることも事実です。
対象と真剣に向き合い、関係性を築くことで、利用者さんやご家族さんより、とても温かい感謝の気持ち・お言葉をいただく場面も多々あります。
信頼関係を築きながら、安全安楽な自宅療養の継続のため、適切なケア、助言等ができるようになると、毎日の働く幸福感も、とても高くなるのです。
難しさの中にある看護の楽しさ
訪問看護の具体的な部分について、お伝えさせていただきました。
これは病院でも、在宅でも、どの場面においても変わらぬことだと思っていますが、看護とは人を対象にするお仕事。患者さん、利用者さんへ、人としての礼儀や優しさをもち接するということは、どの場面でも最重要視されるべき点かと思います。
働く看護師にとって、それぞれの家庭等プライベートと両立しながら働くことが、とても大事なことですよね。
訪問看護って楽しそう、働いてみたい、自分には合う気がする!そんな風に感じていただいた方が一人でも多くなれれば、とてもうれしく思います。
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